腰痛は怒りである
本のご紹介です。
長谷川淳史「腰痛は〈怒り〉である」
2000年に出版された本ですが、腰痛で
お悩みの方々や施術者のあいだでは、
わりと有名です。
ニューヨーク大学医学部・臨床リハビリ
テーション医学教授のジョン・E・
サーノ医師が発表したTMS(緊張性
筋炎症候群)理論を、わかりやすく紹介
しています。
どのような理論かというと、腰痛や
坐骨神経痛の原因は精神的ストレスで
ある、というものです。
痛みの感覚は意識を支配します。
精神的ストレスやトラウマなどがあった
としても、痛みがある限りは痛みの場所
に意識が向けられていますので、自らの
心の問題に向き合わずに済む、といえ
ます。
例外はありますが、慢性的な腰痛の痛み
とは、トラウマや怒りから目を背ける
ために脳が作り出したものである可能性
がある、というのです。
腰痛の解除には、「腰には痛みの原因が
ない」ということを深層心理から理解
する必要があり、心理療法が必要な場合
もあると述べられています。
にわかには信じられない方もおられると
思います。
日本の腰痛治療といえば、整形外科に
行ってレントゲンを撮り、ヘルニアや
椎間板のすり減りがあれば、「これが
神経に触っているから痛いのです」と
診断され、鎮痛剤や抗炎症剤が処方され
るのが一般的です。
ですが、腰痛のあるなしに関わらず、
無作為に選んだ人々の腰を画像診断する
と、腰痛のない人の腰にもヘルニアや
軟骨のすり減りはあり、腰痛のある人々
との差はみられなかった、という研究
結果もあります。
つまり、腰痛の原因はいまだはっきりと
解明されているわけではないのですね。
本書ではマッサージ治療も否定されてい
ます。
腰をマッサージして腰痛が緩和すると、
腰に痛みの原因があるのだと脳に印象
づけてしまうので、良くないというわけ
です。
私がこの本を読んだのは10年近く前です
が、治療経験を積むにつれて、精神や
自律神経が、筋肉や関節のものと思われ
ている痛みに大きく関与していることを
実感するようになりました。
マッサージや鍼灸も、患者さまに安心
していただくツールとして効果的だと
感じています。
長年、お身体の痛みでお悩みの方は、
ぜひ一度お読みになってみてはいかがで
しょうか。
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